General Information 4 | 割物花火の製造工程
割物花火を例にとり、その製造工程を下のフローチャートに示します。
2-3-2. 配合
三遠煙火では星、割火薬の製造から行っています。そこで、まず原料薬品を混合し、火薬を調製します。火薬を込める紙製の玉皮、導火線、打上げ火薬などは専門の業者から調達し、その後の工程に合わせて加工します。
2-3-3. 星掛け (星の調製)
星には、点火したとき紅(赤)、緑、青など様々な色に発色しながら燃えるものや、尾を引いて長く光るもの、キラキラと瞬くように燃えるもの、激しく明るい光を出す物など様々な種類があります。
この中で発色する物は、加熱された金属イオンの発光による呈色反応(炎色反応)を利用しています。例えば炭酸ストロンチウムを添加した星は燃えると赤色、酸化銅を添加した星は青色に呈色します。
原料の火薬に添加物を加え、成形する過程を星掛けと呼びます。
火薬や植物の種などを芯として、これに火薬を分散させた液体を加えます。 容器の中で常に撹拌しながら少しずつトロ (火薬を水に分散させた液体) を加えていく事で芯に火薬が付き、星は次第に丸く太っていきます。
2-3-4. 星の乾燥
こうして必要な大きさまで太らせた球状の成形体を天日で乾燥させる事で、玉に込める星が調製できます。割火薬の場合にも同様に、籾殻の芯に火薬を付着させて作られます。
2-3-5. 玉込め (組立て)
いよいよ打上げ玉の組み立てです。用意した星や割火薬を、写真のような半円形の玉皮に込めます。外側から順に親星、割火薬、芯星、割火薬と中心に向かって込めてゆき、上側から抑えて平らにします
- まず、外側の親星を玉皮のすぐ内側に並べます
- お互いに混ざらない様に和紙で分けながら、割火薬、芯星と込めてゆき、中心の割火薬を入れます
- 最後に一番上側になった表面を平らに均して、半球型の玉の一方を込め終わりました
こうして込めた半円形の玉皮2つを互いに合わせて、一発の打上げ玉が出来ます。
2-3-6. 玉張り
星と割火薬を込めた玉に、クラフト紙を糊で幾重にも貼付けて補強します。この工程を玉張りと呼びます。
この貼付けたクラフト紙の枚数や強度によって、割火薬によって玉が弾けるタイミングや玉が開く瞬間の限界の強度が変わるため、花火屋にとっては大変重要な工程です。クラフト用紙を何枚、どうやって貼るかはそれぞれが独自の方法を確立させていますが、いずれにしても品質を均一に保つ為には紙を隙間なく、かたく貼っていく事が大切です。
これが1尺以上の大きな玉となると、玉張りにも更に熟練が要求されます。写真は、2尺玉の玉張り作業中の様子です。導火線を下にすると、重みで折れる恐れがあるので、玉を注意深く回転させながら慎重に張っていきます。
2-3-7. 玉の乾燥
クラフト紙を貼った玉を、糊を乾かす為に乾燥させます。乾燥によってクラフト紙が縮み、より紙をピンと緻密に玉に密着させる事が出来ます。玉張り・乾燥の工程を数回〜十数回繰り返して、ようやく打上げ玉が完成します。
打上げ玉の製造には、花火大会でよく用いられる5号玉で星の調製に約1ヶ月、玉張りと乾燥に約1ヶ月かかりますが、天候と製造量、季節などによりその期間は変わります。